夕立のあとで

 ウオーキングの途中で、空が急に暗くなって、雷鳴がとどろき、突然大雨が降り出した。あわてて道端の、屋根と腰掛だけある休憩小屋に飛び込んだ。一時間半ほど雷鳴と大雨の中に閉じ込められたが、雨は不思議なほどピタリと止んだ。再び歩き出すと、しばらくして、また真夏の日差しが容赦なく照り付け、体中から汗が噴き出るような真夏日になった。たまらずに木陰に入って、ベンチに腰掛けて汗を拭いた。雷雨の時には全く聞こえなかった蝉の大合唱が始まっていた。じっと聞いていると、イライラしてくるほどだ。しかし、しばらく聞いていると、あのうるさい蝉の気持ちも、何となくわかるような気がしてきた。蝉は、地中から這い出て、生きているのはせいぜい十日ほど、運の悪いやつは、蜘蛛の巣に引っかかって、まだ早死にするやつもいる。鳴き声も出さずにじっと木にしがみついていたら、もう二、三日は長生きできるかも知れないが、それでは、仲間の誰にも気づかれないまま死を迎えるかも知れない。目いっぱい声を張り上げて、「俺はここにいるぞ!」と自分の存在を主張しているのだろう。どれだけの蝉が子孫を残せることになるかな。人間社会もおなじようなものではないだろうか。自己主張をしなければ、気づかれることも少なく、やがて忘れ去られてしまう。

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