思い出した詩人!

 たはむれに母を背負ひて

 そのあまり軽きに泣きて

 三歩あゆまず(石川啄木

 私の場合は戯れではなく、母を病院に連れて行くのに自動車まで背負って行こうとした時のこと。母の場合は逆に重すぎたのです。ぎっくり腰を二度経験してその辛さを嫌というほど知っているので、背負うのをあきらめ妻と二人で両肩を支えて自動車に乗せました。啄木とはえらい違いで、お笑いというほかありません。高校時代には啄木の詩(短歌)が好きで暗記もしていました。二十七歳という若さで亡くなった情熱の詩人「石川啄木」は高校時代には共感することも多く、詩が好きになるきっかけになりました。年を経るにしたがって、すっかり頭の中から消え去っていたのですが、このことがあってから啄木の詩を思い出してみました。たった三つしか思い出せませんでした。なぜか、「砂」の入ったものばかりでした。

 ・東海の小島の磯の白砂に

  われ泣きぬれて

  蟹とたはむる(石川啄木

 ・いのちなき砂のかなしさよ

  さらさらと

  握れば指のあひだより落つ(石川啄木

 ・砂山の砂に腹這い

  初恋の

  いたみを遠く思い出づる日(石川啄木