今はもう秋! トワ.エ.モア

 日本のあちらこちらで大きな爪跡を残していった大雨が、ようやく過ぎていった。気が付けばいつの間にか九月。山すそを歩いていると、ひんやりとした透明な秋色の風が、夏の日差しで真っ黒になった私の顔を心地よく撫でていく。人通りも少ない山沿いの道を歩きながら、なぜか「トワエ.エ.モア」の「誰もいない海」を口ずさんでいた。「今は~もう秋、誰も~いない海・・・・私は忘れない海に約束したから・・・」と歌っていたら、「空」、「初恋の人に似てる」など当時ヒットした曲を次々と思い出した。あの白鳥英美子の透き通るように澄んだ歌声が今もはっきりと心にしみついている。今はスナックなどで話題にしても、若い女の子で知っている子はほとんどいない。もっとも、スナックで歌う歌にしては、寂しすぎて場に合わないのかも知れない。今は、AKB48などのように、激しいメロディの音と会場狭しと踊りまわるダンスを目で見て、聞いて、体全体で感じるように作られている曲が多く、とても私の世代ではついていけない。しかし、私は歌の魅力は、「歌が始まれば、一瞬にして人を沈黙させる」という力を持っていることだと思っている。昭和の歌は確実に人の心をとらえて、生涯忘れえぬ思い出の歌として心の中に残っているものも多いと思うが、現在のものもそのように残っていくのだろうか。