歌手:藤けいこさん さようなら!

 一世を風靡した昭和の大歌手、藤けいこが亡くなった。13階からの飛び降り自殺という結末。スナックのママに、名前が同じ「けいこ」でも、姓が藤でなくてよかったね、13階から飛び降りたら痛いどころじゃすまないよ」と冗談を言ったら笑ってた。藤けいこの歌は、演歌と言うよりも、怨歌というほうがぴったりするような歌だった。きりっとした日本人形のような美しい顔立ちをしながら、笑顔一つ見せずに怨歌を熱唱する。幼いころから極貧の生活を暮らし、幸せな時期は極めて少なかった。若くして歌手として独り立ちした頃は、すでに大人の世の中の矛盾や、嘘ばかりが彼女を苦しめていたと思う。彼女の歌の一節に、「昨日マーボー今日トミー、明日はジョウジかケンボウか忘れられないやつばかり・・・。」とあるが、この子たちも今はどう思っているんだろうなぁ。私の好きな彼女の歌の中に、「女ですもの恋をする、女ですもの夢を見る、女ですものただ一人、女ですもの生きてゆく。」ついう一節がある。今頃時々カラオケで歌ってみるが、彼女の人生は若くしてこの歌に凝縮された「さだめ」ではなかっただろううか。身は地に落ちても、藤けいこはビルの窓から思い切り幸せな空に向かって羽ばたいていったと思いたい。